大腸カメラの費用相場は?内訳と健康保険・医療費控除の適用条件などを解説

近年、大腸がんの患者数は増加の一途をたどっています。このことは様々なところで報じられたり、取り上げられたりするため、知っている方も少なくないです。
大腸がんの予防や早期発見のためには、大腸カメラをやった方が良いことは漠然と理解されている方も多いのですが、費用面が心配で敬遠されることも少なくないのではないでしょうか。
実際に、私も普段の診察で、患者さんから「よく分からないけど、大腸ポリープをとったら、5、6万は軽くかかるのでしょ」というような質問を受けることがあります。しかし、実際にはそこまで費用はかかりません。
例えば、当院での大腸カメラの費用は3割負担の方で6,000円程度です。ここに多数のポリープ切除などが加わると最大で28,000円程度まで上がる可能性があります。もちろん、この費用は安価ではありませんが、思ったほど高額ではないのではないでしょうか。
また、そもそもの大前提として、人間ドックで実施する場合をのぞいて大腸カメラは保険診療ですので、国によって定められた費用となります。そのため、どこのクリニックや病院で受けても、行った医療行為が同じであれば費用は一定です。
ここでは実際の費用を解説させていただき、皆様にとっての大腸カメラを行う敷居を低くし、大腸がんの予防や早期発見につなげられればと考えています。
大腸カメラの費用

はじめに、大腸カメラの費用について解説します。
保険診療で検査可能(どの医療機関でも費用は同じ)
大腸カメラは、普段の診察と同じように保険診療で検査可能です。そのため、患者さんごとの負担割合が適用され1〜3割負担となります。
保険診療ですので、国が定めた診療費での請求となるため、クリニック毎に費用が変わることはありません(使用した薬剤の種類などで、微々たる差異は生じます)。
しかしながら、人間ドックのような検診で行う場合は、自費ですので全額自己負担となり、また検査費も医療機関毎に違いますので注意が必要です。
また、保険診療の場合、上記のように検査費が定められているため、少し前の内視鏡を使用しても、最先端の内視鏡を使用しても検査費に違いはありません。同様に、検査する医師が非専門医であっても、専門医であっても費用は変わりません。
そのため、同じ検査費を負担するのであれば、設備が整い、腕の良い内視鏡医が検査を行う専門クリニックを探すのがおすすめです。
上野消化器内視鏡クリニックでは、ブルーライトを設置した検査室や、AI機能を駆使した最先端の内視鏡設備を整えています。また、多くの内視鏡検査の経験のある消化器内視鏡学会専門医が検査を担当し質の高い検査を提供します。
大腸カメラの費用(保険診療)
大腸カメラの費用の難しいところは、検査をしてみないと検査費用の総額が確定しないところです。なぜなら、組織を採取する生検やポリープ切除の有無によって費用が大きく変わるからです。
当院での場合、生検やポリープ切除が必要でない場合は6,000円程度(3割負担での費用)です。しかし、ポリープを多数切除した場合は最大で28,000円程度(3割負担での費用)まで上がります。
また、大腸ポリープを切除した場合、「日帰り手術」として医療保険やがん保険の適用になり、給付金を支給されることがあります(詳しくは加入している保険会社にお問い合わせください)。
簡単にまとめると、「大腸カメラは1万円しない。大腸ポリープを切除したら2万円以上かかるが、3万円あれば足りる(3割負担)」と考えていただければと思います。
そもそも大腸ポリープを切除する理由は、放置すると大腸がんになってしまう可能性があるからです。「大腸がんを予防できた」費用としては、理不尽に高額な検査ではないと考えています。
※検査の具体的な費用例などはこちらのページをご参照ください。
検査費用の内訳や,その他にかかる費用

大腸カメラを行った場合、その他に診察料などがかかる場合があります。また、鎮静剤を使用し眠ったような状態のまま検査する場合は別途鎮静費用が必要になります。ここでは、大腸カメラの際に必要になりうる費用について解説します。
大腸カメラ検査:5,000~6,000円
大腸カメラ自体の費用は保険制度で定められています(2025年4月現在 保険点数1550点)。3割負担では4,650円の費用がかかります。
この費用に、検査で使用する薬剤の費用が加算されます。例えば、検査前に内服する下剤や、検査時の鎮痛剤などがあります。医療機関によって、これらの使用する薬剤が若干異なります。
そのため、病院によって費用が変わり得ますが、発生しても数百円程度です。例えば、当院であれば総額で5,300円程度(3割負担)となります。
生検(病理検査): 4,000~1,2000円
生検とは生体検査という意味で、組織を採取し、顕微鏡による病理検査をおこないます。進行大腸がんを疑う場合や、大腸に炎症を認め、潰瘍性大腸炎などの疾患を疑う場合に行われます。
生検の費用は1部位に対して3,900円かかります。3部位以上の生検をした場合の費用は3部位分の費用で実施可能です。これが大腸検査費用に上乗せとなります。
生検の特徴として1部位では、診断が難しいことも多く、3部位以上に及ぶことも多く、その場合は3,900円×3部位で11,700円程度の費用がかかります。
大腸ポリープ切除:23,000~28,000円(総額)
大腸ポリープには様々な種類があります。大腸ポリープを認めた際は、そのポリープが放置すると大腸がんになるかどうか(悪性化するか)を判断します。
悪性化しうるポリープと判断した場合は、その場で内視鏡的に切除します。切除した場合は、切除したポリープの部位や個数によって費用が変動します。
1部位でポリープを切除した場合は検査費用も含め総額で23,000円程度(3割負担)の費用がかかります。2部位でポリープを切除した場合は25,500円程度、3部位以上の場合は28,000円程度の治療費となります。
上記のように3部位以上では費用は変化しないため、多数のポリープを切除した場合であっても最大で28,000円程度になります。
検査費用の上限:28,000円程度(3割負担の場合)
大腸カメラの費用には上限があります。
例えば、多数のポリープを切除し、生検を複数箇所行った場合、純粋に足し算をすると、多額の検査費用がかかる計算になります。
しかし、実際には28,000円程度(3割負担の場合)が上限となります(正確には、保険システムにおいて上限が定められているわけではないのですが、わかりやすくするために上限という言葉を用いています。ご理解ください。)。
鎮静剤を使用する場合:500円
大腸カメラは大腸の中を内視鏡が通っていくので、人によっては痛みや違和感を伴う場合があります。このような不快さを解決するために鎮静剤を使用し、眠っている間に検査を終わらせることが可能です。
この検査に伴う痛みなどは、医師の技術によって大きく軽減することが可能ですが、やはり鎮静剤を使用する方が楽に検査が受けられるのは間違いありません。
鎮静にかかる費用は、使用する薬剤量や種類により変化しますが、そこまで大きくはかわりません。3割負担で500円程度です。
大腸カメラの検査費用と比べると微々たるものなので、コストパフォーマンスは非常に優れています。そのため、当院での検査をする方のほとんどの方は鎮静剤を使用した検査を行っています。
診察料(再診料):220円
大腸カメラでは、診察料が必要となります。基本的には大腸カメラは一度、事前診察を行い別日に検査となるので再診料が必要です。
再診料は3割負担で220円です。当日の緊急検査の場合は、再診料の代わりに初診料として、870円かかります。
細かい話になりますが、大腸ポリープを切除した場合は、切除費用に診察料が含まれるため、別途診察料がかかることはありません。
その他の検査(血液検査,便培養検査など)
大腸カメラを行った際に、大腸の粘膜の状態によっては、さらなる精密検査のために、血液検査や便培養検査が必要になる場合があります。
このような場合は、そこまで多くはないですが、必要な場合は別途費用がかかります。検査する項目にもよりますが、3割負担で血液検査は2,000円程度、便検査は1,000円程度かかる場合が多いです。
健康保険・医療費控除・生命保険の利用を検討

大腸カメラは大腸がんの早期発見、早期治療には欠かせない検査であるため、定期的に検査を受けることが望ましいです。
検査費用を抑えるために、可能であれば健康保険や生命保険、医療費控除を利用することが大切です。
ここでは、健康保険と医療費控除の適用条件、生命保険での扱いについて詳しく解説します。
健康保険の適用条件
大腸カメラは健康保険を利用した保険診療で実施可能です。健康保険は「検査が必要な場合」や「自覚症状がある場合」に適用されます。当然、無条件ではありませんが、その適用範囲は広いので、さほど心配する必要はありません。
診療していると、患者さんから「保険診療で検査できますか」という質問を受けることも多いです。
しかし、そもそも時間と費用をかけてまで、大腸カメラをやってみようと思っている方は、何かしらの自覚症状があることがほとんどですし、その場合は当然保険診療で可能です。
便検査やCT、腫瘍マーカーなどの他検査での異常や自覚症状がある場合は基本的に保険適用ですので、あまり深く考える必要はありません。健康保険が適用可能かどうかご心配な方は、一度お気軽にご相談ください。
具体的な健康保険ができる場合は以下の通りです。参考にしてください。
- 大腸ポリープの切除目的の検査であること
- 健康診断で便潜血検査の結果が陽性だった場合
- PET検査や腫瘍マーカー検査、CT検査で精密検査が必要な場合
- 定期的に検査をするように医師から指示された場合
- 血便や便通異常(下痢、便秘)などの自覚症状がある場合
- その他の自覚症状がある場合(膨満感、残便感、腹部違和感など)
医療費控除の利用も検討
医療費控除とは、「1年間の医療費が一定額を超えた場合」に利用できる制度です。
令和6年の時点では、年間の医療費が10万円以上を超えた場合が一つの目安となります。制度は常に変更される可能性があるので、詳しくは国税庁のHPを確認してください。
そのため、大腸カメラの医療費だけでは医療費控除の対象金額には届きません。他疾患での手術などが重なり、医療費がかさんだ時は利用を検討しましょう。
医療費控除を適用するには1年間の医療費を計算して確定申告する必要があり、何もせずに放置したままだと医療費控除は受けられません。
確定申告に必要な医療費控除の書類は別途で自宅に送られてくるため、届き次第忘れずに保管しておきましょう。
大腸ポリープ切除は生命保険が適用される場合も
大腸カメラは大腸ポリープを切除した場合には、3割負担の場合、最大で28,000円程度の治療費がかかる場合があります。
しかし、生命保険に加入していた場合、大腸ポリープ切除は外来手術(日帰り手術)として保険金が給付される場合があります。
注意点としては、あくまでもポリープを認め、切除した場合のみです。大腸カメラの観察のみで終わった場合や、生検による組織採取だけでは保険金の支払い対象になることはありません。
生命保険に加入している方は、一度、保険会社に契約内容の確認をし、大腸ポリープ切除が給付対象になるかを聞いておくことをお勧めします。
大腸がん検診(便潜血検査)の限界

大腸の検査という意味において、大腸カメラの他に便潜血検査があります。便潜血検査はその名の通り「便に血が混ざっているかどうか」を判断する検査です。
便潜血検査は「大腸がんがあれば、出血して便に血が混ざるはず」という理由で、大腸がん検診で使用されることが多い検査です。
当院の所在地である台東区も、大腸がん検診はこの便潜血検査で行っています。しかし、便潜血検査は一定の効果はあるものの、やはり大腸カメラと比較して、精度が著しく落ちることには注意が必要です。
便潜血検査では、進行大腸がんであっても、検出できないケースも少なくありません。そのため、便潜血検査をしていれば大腸がんは見つかる、防げるという検査ではありません。
大腸がんは良性の大腸ポリープが育って、悪性化することで発生することが多いです。つまり、大腸がんを防ぐには、大腸がんになる前のポリープのうちに切除することが大切です。これは大腸カメラ以外ではできない事です。
このような理由から、便潜血検査が正常であっても、大腸カメラをやらなくて良い理由にはならないことは知っておく必要はあります。
40歳を過ぎたら、便潜血検査に異常が無かったとしても、ぜひ定期的に大腸カメラ検査を受けましょう。
まとめ
大腸カメラの費用は健康保険を利用して保険診療による実施が可能です。医療機関によって、使用薬剤による多少の金額の差はあるものの、観察だけであれば6,000円程度(3割負担の場合)で可能です。
保険診療の場合、検査費用などは制度により定められているため、どの医療機関であっても費用の差はありません。
一方で自費診療として行う場合は、医療機関により大きく差があるので注意が必要です(医療機関がそれぞれ検査費用を自由に決めることが可能なため)。
ポリープを切除した場合や生検による組織採取を行った場合は、費用が高額になります。しかし、保険診療であれば、ポリープを多数切除するような最も費用がかかる場合であっても28,000円程度(3割負担の場合)が上限になります。
ポリープ切除を行った場合、外来手術として生命保険の給付の適用になる場合があり、加入している場合は確認が必要です。
※この記事は上野消化器内視鏡クリニックの場合を中心に記載しています。最終的な費用などについては、受診する医療機関にお問い合わせください。
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内視鏡検査は日本消化器内視鏡学会専門医が担当し、日帰りでの大腸ポリープ切除や胃カメラ、大腸カメラの同日検査も実施しています。
検査前の下剤内服はクリニックでも可能です。患者さん毎に個別トイレや個別スペースを設置しています。free Wi-Fiや電源も常備しており、作業しながらの前処置も可能です。
状況によっては当日や翌日での検査も可能ですので、まずはお気軽にお問合せください。