ピロリ菌

ピロリ菌について

ピロリ菌ピロリ菌は幼少期に胃に感染し、慢性的な炎症を引きおこし、胃がん胃潰瘍といった疾患のリスクを高めます。
特に胃がんのほとんどは、このピロリ菌感染により傷ついた胃に生じるため、ピロリ菌感染の有無を知ることは非常に大切です。
またピロリ菌は薬剤治療により除菌することが可能であり、胃がん発症のリスクを下げることができます。

ピロリ菌の原因

感染ルートは完全には明らかになっていませんが、ピロリ菌に汚染された水の摂取(特に井戸水に多い)や、親がピロリ菌感染者の場合、離乳食時の口移しを通じて感染します。上下水道の発達が進んだ日本では、若年者の感染者は減っています。
大人になると免疫力も高くなるため、ピロリ菌の新規感染は稀です。そのため、一度除菌が成功すれば再感染は心配しなくて大丈夫です。また、除菌治療を行うことで子供への二次感染をおこす心配がなくなります。

ピロリ菌と胃がん

ピロリ菌感染が慢性化すると、胃での炎症が続くため、胃がんのリスクが跳ね上がります。実際に胃がんの90%以上はピロリ菌感染によって引き起こされています。しかし、除菌治療が成功すれば、胃がん発症リスクを1/3~1/4程度に低下することができます。しかし、残念ながら一度もピロリ菌がいなかった方よりは胃がん発症リスクは高いままです。そのため、ピロリ菌が一度でもいた方は、胃がんになる可能性が高いため、毎年の胃カメラ検査が特に大切です。

胃がんについて

ピロリ菌の症状

ピロリ菌が感染していること自体では、症状がないことが多いです。時に胃部不快感や胃痛などが生じます。ピロリ菌に感染していると胃潰瘍胃がんになりやすいので、それらによる症状がでることはあります。

ピロリ菌の検査

保険診療でピロリ菌の検査を行うには、制度上、まず胃カメラで胃の中の観察をする必要があります。内視鏡検査を行い、必要あればピロリ菌感染の有無を調べることになります。
ピロリ菌の感染を調べるには、いくつかの検査方法があります。検査のタイミングや内服している薬などによって適した検査が異なりますので、診察時に最適な検査をご案内します。

胃カメラ検査

まずは胃カメラ検査を行います。ピロリ菌自体は目視で見える大きさではありませんが、ピロリ菌は胃の発赤やびらん、粘膜の萎縮を引きおこす萎縮性胃炎という特徴的な内視鏡所見があります。そのため、内視鏡で胃粘膜を観察すれば、ピロリ菌が今いるのか(現感染)、以前いたのか(既感染)、感染したことがないのか(未感染)はおおよそ見当がつきます。現感染、あるいは既感染を疑う場合は、下記の検査を行い確定診断します。
胃カメラでのピロリ菌検査は3種類ありますが、いずれも胃の粘膜を採取し検査します。胃の観察と一緒にできる利点はありますが、組織を採取するという侵襲性があります。

胃カメラについて

呼気検査

尿素呼気検査(UBT)と呼ばれる検査です。除菌後にピロリ菌がいなくなったかどうかの判定のために最も行われている検査です。精度も高く、信頼できる検査方法です。デメリットとしては検査前に8時間以上の絶食を行わないといけないことや、胃薬や抗生剤を検査前2週間は内服してはいけないことなどがあります。

血液検査

血液検査によりピロリ菌の抗体価を測定し、感染の有無を検査します。血液検査のついでに調べることが出来ることや、胃薬を飲んでいても検査できるなどのメリットがあります。しかし、除菌後が成功したかどうかの判定には解釈が難しい場合があります。

便検査

便検査により、ピロリ菌に特有の抗原を確認します。検便をしなくてはいけないという面倒さはありますが、胃薬を飲んでいても検査結果に影響が少なく、正確に検査可能です。

ピロリ菌の治療(除菌治療)

除菌治療は2種類の抗生物質と胃酸分泌抑制薬の3剤を1週間内服します(一次除菌)。1回目の治療でピロリ菌の排除に失敗した場合は、2回目の薬剤治療を行います(二次除菌)。抗生剤の組み合わせを変えただけで、他は1回目と同じように1週間内服します。
保険診療では二次除菌までしかできないため、2回目でも失敗した場合は、除菌をあきらめて定期的な胃カメラで注意深く経過観察をしていくことになります。

ピロリ菌の除菌治療の進め方

1ピロリ菌検査

胃カメラ検査を行い、ピロリ菌感染が疑わしいと判断された場合、呼気検査や血液検査でピロリ菌感染の有無を確認します。

2検査結果の確認

ピロリ菌が陽性の場合は除菌治療を行います。
陰性の場合であっても、「今はいない」という事を証明したに過ぎません。内視鏡検査で過去にピロリ菌がいたことを疑う所見を認めた場合は定期的な内視鏡検査が必要です。

3除菌治療1回目(一次除菌)

3種類の薬を1週間内服する事で行います。3つの薬のうち、2つは抗生物質で、1つは胃酸分泌を抑える薬です。
副作用には下痢や軟便、気分不快感、味覚障害、アレルギー反応などがあります。

4除菌治療の効果判定(1回目)

1回目の治療で除菌が成功するのは9割程度です。除菌が成功したか判定するためには、治療から1~2ヶ月以上経ってから確認検査をする必要があります。効果判定のためには、呼気検査や便検査を行うのが一般的です。
残念ながらピロリ菌を駆除できなかった場合は、2回目の除菌治療を行います。

5除菌治療2回目(二次除菌)

1回目の除菌治療では、1〜2割の方が除菌に失敗する可能性があります。除菌効果の判定で陽性となった際は、2回目の除菌治療を受けることも可能です。
2回目は、1回目で使った抗生物質の1つを別のものに変えて、その他は1回目と同様の方法で実施します。

6除菌治療の効果判定(2回目)

1回目と同様に、治療から1~2ヶ月以上経過してから効果判定をします。2次除菌まで行った場合、約97%の方でピロリ菌を駆除できます。